東京高等裁判所 昭和48年(ネ)377号 判決
右認定のように被控訴人が控訴人に売渡した合板については、接着不良というかしが存し、被控訴人は債務の不完全履行により控訴人が蒙った損害を賠償すべき責を免れないというべきであるが、不完全な合板の数量および損害の額については、左に認定する以上のものは、これを確認できない。
(一) まず不完全さの程度であるが、使用前に水分を吸って一回も使用できなかった合板は返品すれば足りるが、当事者間に争いがない返品分以外については、これを認めるに足る証拠はない。
(二) そこで一体合板が何回使用に堪えうるかの点であるが、≪証拠≫によれば、五回と認められ、これに反する原審証人斉藤倶令、同楠武夫、同飯塚清三の各証言は採用しない。
(三) つぎに五回使用できるものが、一回または二回しか使用できなかった合板数について、原審(第一、二回)および≪証拠≫によっては、控訴人主張数量を確認する証拠としては充分でない。
しかし≪証拠≫によれば、控訴人から連絡をうけて中野の集積場所に行ってみたらコンクリートのついた合板が、二ブロツク積んであり、その枚数は二、〇〇〇枚くらいであったと述べている。もっとも同証人は右製品が被控訴人の製品であるか確認できなかったとも述べているが、≪証拠≫によると、同人が右検分の直後、自社製品がプレスに入れる前に糊が乾いてしまいプレスした時に接着の効果をあげていないものがあったことを詫びる旨の書簡を出していることが明らかであるから、同人において右検分にかかる製品が自社製品であり、接着不良のかしがあることを容認していたものであることを認めるに難くない。
(四) つぎに右不良品が何回使用したものかについて判断するに、前記のようにすでにコンクリートが附着していたのであるから、少くとも一回は使用しているわけである。
≪証拠≫によると、不良品は、無理して使用しても二回位しか使えないというのであるから、最低にみつもっても、右不良品は二回使用分と認めるのが相当であろう。
(五) 弁論の全趣旨によれば、控訴人、訴外会社間の本件合板の売買価格は一枚金五二五円であることが認められるから、五回使用できるのに二回しか使用できなかったことにする損害は合板一枚につき金五二五円の五分の三すなわち金三一五円に前記二〇〇〇枚を乗じた金六三万円となり、原審における控訴会社代表者本人尋問の結果によれば、控訴人主張の不良品の代金については納入先である訴外会社からその支払いをうけられず、被控訴人に対しては右不良品についても代金の支払いをすませているというのであるから、少くとも右金員について被控訴人は債務の不完全履行による損害として賠償する義務があるというべきである。
(田嶋 加藤 園部逸)